モノクロに君が咲く
ひとつひとつの単語をたっぷりと咀嚼し、やがて私は顔を青褪めさせた。なによりもここに、病院にユイ先輩がいるという事実が、私を動揺させる。
「あ、の……先輩……」
「さっきご両親が来られてね。今、先生と話してるよ。弟くんは……その、結構取り乱してて。でも、たぶん廊下にいるから、呼んでこようか」
「っ、待って、ください」
どうしてなにも聞かないのか。もう知ってしまったのか。尋ねたいことはたくさんあるのに、上手く声が出てこない。言葉もなにもかも、不安に押し流されそうだ。
すると先輩は、そんな私を落ち着かせるように頭をそっと撫でてくる。
「いいよ、言わなくて」
「っ、え……?」
「君が言いたくないなら、聞かない。君が俺に話したいって思ったときでいい」
「なん、で……」
「ああ、勘違いしないで。どうでもいいからじゃない。君が大切だから、泣いてほしくないから、そう言ってるだけ」
ユイ先輩が慈しむような優しさを孕んで、私の目尻を指先で拭う。
そこでやっと、自分が泣いているのだと気づいた。
「でも、これだけは言っておく。俺はね、小鳥遊さん。今こうして、君のそばにいれてよかったって、心の底から思ってるよ」
ユイ先輩の瞳の色は、相変わらず静かな夜の空のようで。けれど、そのなかには言い表しようのない切なさが滲んでおり、私は返す言葉を失ってしまう。
ユイ先輩の方が、泣きそうだ。
胸の奥深くを引っかかれたような痛みを覚えながら、くしゃりと顔を歪める。
こんな顔をさせたくないから、今まで黙っていたのに。
ああもう、本当に、私はいったい、なにをやっているんだろう。