悪役令嬢は最後に微笑む
二度目の人生がどうなるか分からないけれど、今はこの子を守りたい。素直な自分の気持ちをぶつけた私は、真直ぐにアーサーを見つめた。
どこか様子がおかしい私をアーサーは睨みつけるけれど、一向に襲ってこない狼に彼は溜め息を零してファナをエスコートしながら大広間から出て行った。
ああ、国王様の元へ挨拶に行ってこの国の使い手としての役割の話を聞かされる場面に動いたのか。
本来なら、リサリルである私がファナに敵対心を剥き出しにして、一人で出て行くんだったわよね?
なんか原作と変わってきているけれど、今はとにかく一人になりたいと王宮を出ると迎えの馬車がやって来た。
不思議と体に馴染んだ動きで馬車に乗り込み屋敷へと辿り着くと、私はそのまま自室へと一目散に向かった。
勿論、大人しく付いて来る狼も一緒に。家族には大精霊様が喚んだ聖獣ということにしたけれど、私の言葉に眉間にしわを寄せて渋々納得した様子にとりあえずホッとする。
部屋に入ってようやく人目を気にしなくても良くなった私は、大きな溜め息を零してベッドへと座り込んだ。
「色々ありすぎて、何が何だか……」
まだ整理もなにも追いついていないけれど、静かな部屋に小さく自分の鼓動が響いて聞こえてくる。