悪役令嬢は最後に微笑む
守りたい存在
精霊の使い手として、神殿での修行が始まったその日。
欠かさず毎日行っている特訓を活かそうとするものの、これまでの悪役令嬢としての振る舞いを払拭出来ず、着実にストーリーが進んでいるのは感じていたが、まさかの出来事が起こった。
「バ、ル……?」
「今日から俺もリサリルの傍で、精霊の使い手の手伝いをしようと思ってついて来た」
神々しく祀られた大精霊様の像と、琥珀色の宝珠が飾られた神殿にバルの軽やかな足音が小さくこだまする。
これまで大人しく家に居たはずのバルが神殿の大人達がざわめく中で、何も気にしていないような顔で私の隣へとやってきた。
元々原作に居ない存在だし、かっこいいから誘拐なんかされたり、何か危険な目にあったりしないか心配で家に居てもらっていた。
特訓の成果が出ないと落ち込みそうになっていた私に、自分に一つ考えがあるから大丈夫だと言われていたけれど、まさかバル本人が傍に来るとは。