悪役令嬢は最後に微笑む
神殿に向かう途中で迷子になっていたファナと、ばったりと言うのが正解か、作り出されたと言うべきか……アーサーは神殿まで案内するまでの道中でデートするんだったわね。
つくづくファナ視点ばかりでアーサーを見てきたけど、中々ヤバい男だったのね。政略的とはいえ私という婚約者がいながら、何やってるんだか。
デート中に買ったお揃いの互いの瞳の色の石のネックレスを今更隠しても、遅すぎますよー?
「やはり使い手は一人だけでいいと思いますけど?庶民にはこんな責任重大な責務は果たせそうにありませんもの。道草の続きでもして来たら如何ですか?」
嫌味交じりにそう言って呆れて二人を見ていたが、はっと傍にいるバルを見る。
バルがいるのにこんな言葉を投げかけてしまった。これまでの特訓の成果と、彼の存在の力で素直になりたいのに。がっかりされて、傍に居たくないとか思われたらどうしよう……。
「アーサー様、私怖いです……!」
「お前っ……そんな魔物を引き連れて、とうとうおかしくなったのか!」
私の投げかけた言葉など聞いてもいないような素振りで鋭く睨みつけてくるアーサーだけど、私には今それどころじゃない。