悪役令嬢は最後に微笑む
バルに今の言葉は本心じゃないことを伝えたいけど、ここで喋り掛けたらバルに迷惑かけちゃうかもしれないし……と視線で訴えかけていると、聞いているのかとアーサーが大きな声を上げて剣を構えていた。
「リサリル。こんな神聖な場に魔物を連れてくるなど、無礼にも程があるぞ!」
「はい?」
「お前はいつもそんなことしているから魔力にも恵まれることもなく、役立たずのお飾り公爵令嬢なんて言われるんだろうが」
お飾り公爵令嬢という言葉はゲーム内で聞いたことは一度も無かったはずなのに、どうしてか胸が抉られるような気持ちに唇を噛み締める。
「悍ましい悪魔のような魔物をこんな神聖な場所に連れてくるなんて、リサリル様こそ使い手としてどうかと思います!」
「心が醜いせいで、遂に悪魔までも従えたか。随分とお似合いだな。清らかな心を持つファナとは大違いだ」
嘲笑い蔑むような目を向けてくる二人に何も言い返せない。
沈んでいく気持ちに影が宿ったような気がした時、牙を出し威嚇するバルが私の前に出た。
グルルと唸るバルの声が、神殿に響くと短いファナと悲鳴が被さって響く。
「キャッ!!な、なんて……汚らわしい!精霊の使い手である私と、アーサー様に牙を向けるなんて!」
「寄るな!やはりこいつは悪魔だっ……」
血相を変えた二人の慌てっぷりのお陰か、私は至って冷静に唸るバルに大丈夫と声を掛けて二人を見つめた。