悪役令嬢は最後に微笑む
「剣を収めてください。この子はその剣に怯えているだけです」
「そうやって従える側の優越に浸っているつもりか?悪魔を従えるとは、一体何が目的だ!」
大人しく引いてくれたバルに代わるように大声で叫ぶアーサーに怯むことなく、ふつふつと湧き出てくる怒りを何とか抑えながら、口を開いた。
「この子は悪魔なんかじゃありません」
「はっ!お前の言葉なんか信用するとでも思ったか?これまでのお前の汚い行いは全て知っているんだぞ?」
「私について何か文句があるのなら、いくらでも言って下さい。でも――バルに対してそんな言葉を投げるのは例えアーサー様でも許せません」
揺るがない思いをぶつけた私にアーサーは狼狽えると、剣を鞘に納めるとファナの肩を抱き寄せて神殿の外へと続く扉へと向かって歩み始める。
「こんないかれた奴に付き合っている時間が勿体ない。王宮でゆっくりと修行をすればいい。行こう、ファナ」
「は、はい!」
肩を並べ陰口を囁いては笑い合う二人を無視して、残された私は勢いよくバルを抱きしめた。