悪役令嬢は最後に微笑む




 気がつけば私は、彷徨うように町の中を歩いていた。

 ふと視界に入った、いつもならあまり入らない店。でも飾られたポスターに吸い寄せられるように店内へと入り、店から出る頃には私の手元には一本のゲームソフトがあった。


「後輩が面白いからって勧めてくれていたんだし、きっといい気分転換になるわよね」


 結構前から会社の後輩に聞き飽きる程に勧められていた乙女ゲームのパッケージを見つめて小さく笑う。

 元々ゲーム好きだった私には、今できる気分転換方法がこれくらいしか思い浮かばない。誰からも好かれる素直なヒロインから何か学べるのではないかと、そう思ってつい買ってしまったと言うのが本音だけど。
 
 失恋して直ぐにこんな作られた恋愛《ゲーム》で、誰かからの愛の言葉を貰う奴なんて相当痛い奴だけど、こうでもしないと今にも全てが崩れてしまいそうだった。

 家に帰って埃をかぶっていたゲーム機をクローゼットの奥から引っ張り出して、買ったばかりの新しいソフトをセットする。

 起動させてすぐに流れ始めた、アニメ調のオープニングムービーに少し胸をワクワクさせながらコントローラーを握り締めた。


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