悪役令嬢は最後に微笑む
自分の気持ちが素直に言葉に出来ていたと言うのはあながち間違いではない。
でもあんな態度取り続けていたら、破滅ルートまっしぐらなのは変わりない。どんな破滅ルートが待ち受けているのか分からない現状では、あまり波を立てたくはないんだけど……。
でも今回は間違った行動は取っていないし、後悔なんて何もない。修正力に抗って、バルを守れたんだから。
「バルが傍に居てくれたから、私は強くいれたんだよ」
「リサリル……俺は君に傷付いて欲しくないんだ」
「傷付く?私は何を言われたって何とも思わないよ。バルのことを、大切な存在を酷く言われる方が一番嫌なの。だから、謝らないで。ただこうして傍に居てくれるバルに沢山救われているんだから」
何をしたって失敗してしまう私に呆れることもなく、こうして傍に居てくれる。
蔑まれたって、使い物にならないと罵られたって、例え”役立たずのお飾り公爵令嬢”だとしても――。
その単語を思い浮かべた時、ズキンと一瞬頭に響くような痛みが走ったが直ぐに治まった。
暫くしてある一つの記憶が私の中に流れ込んきた。
自室の本棚にある一冊の本の前で佇む、私の姿。記憶はたったそれだけだけど、膨大な数の記憶がそこに在ることを私は知っている。
「リサリル?」
心配そうに顔を覗かせてきたバルにそっと微笑みかけて、私は大丈夫だと強く言い聞かせる。
大切なバルという存在をこれ以上傷つけさせないためにも、私がもっと強くならなくちゃダメなんだから。
だからどうか、大精霊様……私を見捨てないでと、強く願わずにはいられなかった。