悪役令嬢は最後に微笑む
同じ呪い
その日の修行を終えた私は、夜に更けた部屋の中で本棚の前に立っていた。
静かな寝息を立てるバルを横目にしながら、一つ深呼吸をする。
昼間に見た記憶から全てを紐解き、私が私を変えるために、本へと手を伸ばす。
手に取った一冊の本は一見普通に見えるけど、私には聞こえてくる……私である彼女の悲鳴と決意が。
私は今までずっと閉ざされていた記憶を解き放つために、その本を開いた。
夜に飲み込まれた部屋の中で直接頭に響く声と共に、私……リサリルが僅かな光を放ち目の前に立っていた。
そして数々の記憶が私の中に流れ込んで来て、見せつけてくるようだった。
『わたくしは公爵家に生まれながら、王家を支えるための魔力は授からなかった。それなのに王族の婚約者に選ばれる運命にあったわたくしは、才能豊かなアーサー様と比較され、蔑まされていつしか役立たずのお飾り公爵令嬢とまで呼ばれるようになった』
「それって、アーサーが言ってた……」
『ええ。それでもわたくしは魔力が無くとも、公爵家の務めを全うすべく、婚約者として人一倍努力した。その努力が実ったかのように精霊の使い手に選ばれた。これでようやくアーサー様のお役に立てると喜んだのもつかの間……彼女の存在にわたくしの存在意味は失われてしまった』
悔しそうに顔を伏せるリサリルは、震えるか細い手を強く握り締める。