悪役令嬢は最後に微笑む
「バル?!」
呼びかけても、返事は返ってくることはなくて静かな部屋に私の焦る声が響くだけ。
どれだけ屋敷の中を探しても、バルの姿が見つかることはなかった。
急に気まぐれで散歩したくなって外に行ってしまったのかもしれないと、外出の準備をするけれどここでまさかの修正力が働いてしまう。
なんでこんな時にとは思うけど、ストーリーには抗えない。神殿に向かって修行をするけれど、その時もずっとバルの無事を祈った。
「ほう?今日は悪魔は一緒に居ないんだな」
「でもリサリル様からは何か嫌な気配がします……」
「悪魔と契約したんだ。まあ、元々嫌気の差すような女だったけどな」
「アーサー様……」
「なに、心配は要らない。今の俺にはファナがいるかなら」
「そっそんな!私、まだまだ頑張ってアーサー様のお役に立ちます!」
「ああ……ファナは、なんて健気な子なんだ」
今日も遅れてやってきたアーサー達は修行とは別のことに夢中で、二人だけの空気を作っていらっしゃるようだけど、今の私の耳には何一つとして言葉は耳に入ってこない。