悪役令嬢は最後に微笑む



「――い。おい!聞いているのか?!」


 ずっと呼ばれていたことに気付かず、いきなり肩を掴まれ我に返る。

 その痛みに顔を顰めると、アーサーの苛立ちを覚えた表情を浮かべた顔がすぐそこにあった。


「なんだその顔は。気に食わん」


「アーサー様と出会った時よりずっとこの顔ですわ」


「ああ。最初から好かない顔だった。ずっとな」


「呼び止めたのは顔に対する文句だけですか?」


 なんでこんな男が一番人気の攻略キャラだったんだろう。性格悪すぎでしょ。

 行動に修正力は働いても、今日は思ったことがすらすらと口から出てくる。

 うんざりしそうになるけど、煽るようなことは控えて再び祈りを捧げようと両手の指を絡ませる。
 
 今更こんな人達に愛想振り撒いて仲良くしようとしても時間の無駄だ。

 今の私には少しでも早く精霊の使い手としての力を扱えるようになれば、何かが変わってくるのではないかと怒りを剥き出しにしてくるアーサーのお陰で冷静に判断出来た。


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