悪役令嬢は最後に微笑む
主人公と複数人の輝く素敵な攻略キャラ達との恋は、無限大の可能性と希望があるように見えて、今は傷付いていてもいつか必ず成長出来るような気がした。
この乙女ゲームは精霊と魔法が存在する世界。
国を加護する大精霊の使い手として主人公ファナが、メイン攻略キャラの第一王子に召喚されるところから始まる乙女ゲームだ。
ファナは精霊についての知識と力をつけるために、神殿で暮らすことになる。そこで生活し、数々の運命の先で出会う攻略キャラ達と様々な恋をしたり、精霊との契約を得るための冒険をしたりするらしい。
同じく使い手として召喚された王子の婚約者である悪役令嬢が、ライバル精神を燃やして色々と主人公の邪魔をしてくるが、後輩曰くどのルートでも必ず断罪されてスカッとするのもいいと聞いている。
バッドエンドもなく、初心者にも優しい設定だとも言っていたし、とことん楽しんでやろう。
そこから私は無我夢中で、寝ることすらも忘れてゲームに没頭した。きっと一つのエンディングに辿り着くころには、少しは気持ちも落ち着いているだろうとそう思っていた。
「う、嘘……でしょ……?」
亡骸が山となり闇に染まった背景の中、主人公と第一王子の仲を斬り裂き世界を破滅へと導いた悪役令嬢――リサリルが微笑みを浮かべていた。
その嘲笑みが、私に人生の負け組だと言っているようにも見えた。
『ふふ……それでは、ごきげんよう』
リサリルの最後のセリフの後、画面は真っ暗になりバッドエンドの文字が淡々と浮かび上がった。