悪役令嬢は最後に微笑む
「では、近くに行ってみたいお店があるんですけど、そこでどうですか?」
「ああ、勿論」
隣に並んで歩き始め、スムーズなエスコートをする青年に少しドキドキするけれど、安心感に包まれるようで気持ちが落ち着いていくような不思議な感覚だった。
でも辿り着いたその店で、向かい合って座ると彼の美貌に直面して緊張して何を食べても味がしない。
そんな緊張した私に気付いたのか、何気ない会話を持ちかけてくれて、いつの間にか緊張が解れて笑顔の花を咲かせながら楽しい時間を過ごしていた。
お店を出た後も、隣に並んで歩いて街の中を見て回っては、一人の時では味わえない誰かと一緒に共有する時間を過ごした。
そんな楽しい時間はあっと言う間に過ぎていき、日が傾き始めていた。
「そろそろ日も暮れてきた。家まで送ろう」
「何から何までありがとうございます」
「お礼がしたい、そう言ったろう?」
そう言って慣れた様子でエスコートしながら歩く青年の隣で、何故か離れたくない感情が生まれた。
まだ彼は隣にいるのに、出会って半日も経っていない相手になんでこんな……。