悪役令嬢は最後に微笑む
「お、お初にお目に掛かります、アーサー様!下町で花屋を営む、ファナ・カリオーヴァと申します。大精霊様の使い手としてこの国の力になれるよう、努めて参ります」
緊張しながら挨拶をする少女、ファナの手の甲に刻まれた花の紋様は、まさしく……アレだ。
ゲームタイトルのロゴにも使われていた――模様そのもの。
そして顔と名前、それに出てくる単語を総まとめして、私の中で全てが合致してしまった。
もしかしなくても、ここは死ぬ直前にやっていた乙女ゲームの世界?!
なんでこんな所にいるの?!
今すぐにでも頭を抱えて、誰かに問い詰めたいけどアーサーの視線に何故か口が勝手に動いた。
「どうして、こんな庶民が使い手に選ばれたのかしら。わたくし一人で十分だというのに」
ん?!どうしてこんな思ってもいないことがスラスラと?!
口を閉じようにも、不機嫌が滲み出た言葉は止まらなかった。
「正式な使い手としてどちらが相応しいか、分かるのも時間の問題ね」
「リサリル。国の安寧が自分達の手に掛かっていることを自覚しろ。今回の召喚の儀には二人選ばれた。それが特別な意味が込められた、大精霊様からの言葉だと分からないのか?」
待って……今、アーサー何て言った?
き、聞き間違いじゃなければ私に向かって……リサリルってそう呼んだ。