悪役令嬢は最後に微笑む
でも自分が言ってしまったそのセリフは、確かにリサリルが言っていたセリフなのは間違いない。
なんで初対面の主人公ちゃんにそんなキツイ言葉を投げるのよ!ってゲーム画面に向かって言ったのも、まだ記憶に新しい。
えっと、つまり……つまり?
私、前世でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢――リサリル・イルシスになってるってこと?!
性格最悪でまさに悪役として相応しく、メイン攻略キャラであるアーサーの婚約者。
夢なら夢であって欲しいと思っても、感じるその場の空気感やシャンデリアの光の眩しさ、髪を払う感触は現実そのもので夢ではない事を突きつけられる。
「生憎馴れ合うつもりはありませんわ。わたくしは次期王妃となる身として、国のために全力を尽くすつもりです。よくも分からない者にこの国の未来を託すつもりは一切ありませんので」
ああ、また……そんな人を突き放すような事言って……!
今の言葉を否定しようと口を動かしたいのに、私自身の言葉は何一つとして口に出せなかった。
さっきからなんで自分の意志で体を動かせないの?
素直に自分の気持ちを伝えたいのに、それがまるで出来ない。私が私じゃないような、この世界で私という存在が否定されている気がして怖くなった。