君の矢印【完】
side いこい
足音がして振り返ると律くんの姿。
びっくりしたぁ。
いつから聞かれてたんだろう…
ありえないくらい、ただ漏れてる真っ黒なオーラ。
鋭く光る目に身震いする。
「好きな人って誰?」
「え?」
「誰って聞いてんの。」
どうしてそんなに怒ってるの…?
もしかして、幼馴染だから心配してくれてる?
…好きな人は律くんだよって言えたらいいのに。
「律くんには言えない…」
その瞬間、律くんのスイッチが変わるのがわかった。
オーラは変わらぬまま真っ黒で、ゆっくり近づいてくる律くん。
そのあまりの怖さに怖気付いて後退りをするけど、虚しくも私の背中には壁。
それでも律くんの歩みは止まらなくて。
「っ、」
ほとんどゼロに近い距離に、律くんがいる。
私の顔の隣には、律くんの両手が壁についてる。
…逃げ場がない。