君の矢印【完】
「俺に合コンに行ってほしくないんだ?」
私の反論は無視して、意地悪に微笑む。
その笑顔にすら、きゅうと胸がなる。
…行ってほしくない。
だって好きなんだもん。
「そうだよ。だから…行かないで、律くんっ」
気がつけば、縋るように律くんの袖を掴みながら言っていた。
「っ、はぁーー…わかった。じゃあ今日は、お前んちで晩御飯ね。」
珍しく、律くんが参ったって顔してる。
耳まで真っ赤だ…
でもよかった。律くんには行ってほしくないもん。
「うん!」
「今日は帰り遅い日だろ?」
「そうだよ!律くんのところもだよね?」
「おう。」
実は、私の両親と、律くんの両親は同じ会社で勤めている。
部署まで一緒だから、忙しい日がいつも被る。
うちの両親が帰ってきてなかったら、律くんの両親も帰ってきてないことが多い。