君の矢印【完】
どうしたらこんなに純真無垢に育つわけ。
俺のことなんだと思ってんだか。
料理の匂いより、いこいの甘い匂いしか香ってこないんだけど。
興奮するんですけど。
「一口だけだぞ。」
負けた。
お玉に掬って、ふーふーと息をかけて、ある程度冷やしてから、いこいの口に運ぶ。
「んっしい!美味しすぎるっ!」
眩しすぎるほどの笑顔を振り撒く。
ああ、もう。
「律くん天才!」
は?
制服越しに感じる体温。
こいつが天使なのか悪魔なのか分からなくなってきた。
パンっと理性が弾ける音がした。
いこいの折れそうで白い腕が、俺の腰に巻き付いてる。
信じられない。
いこいは横から俺に抱きついてる。
もうこいつは犯罪者でいいんじゃないか。
重罪。
「あっ、違くてっ、これは」
抱きついてることに気づいたのか、いこいは俺の腰から腕を解こうとする。
させるわけなくない?
もう知らない。覚悟しなよ。