君の矢印【完】
毎朝見てるのに慣れないや…
私は物心ついたころから、律くんのことが好きだった。いつからなんてわからないほど前から。
でも律くんは天音のことが好き。
幼稚園の時に私が好きな人を聞くと、顔を真っ赤にした律くんに『僕、天音ちゃんのことが好きなんだ』と言われた。
あの時の衝撃たるや否や。
それに私にはてきとーな返事も、天音にはちゃんと返す。
要領がよくて器用な律くんがネクタイの結び方がわからないわけないのに、毎日天音に頼むのも、天音のことが好きだからだとおもう。
いいのか悪いのか、天音にはその気は全くないみたいだけど…
でも毎日、ネクタイを結ぶ作業を見るのは辛いから、できるだけ目を背けてみないようにする。
…これが高校に入って編み出した、私の打開策。
律くんの恋の矢印は私には向いていない。