君の矢印【完】
「おめでとう!!」
そう言って天音に抱きつく。
嬉しいよね!親友が好きな人と結ばれるなんて!
…律くん大丈夫かな?
ちらっと見上げるとひどく驚いた顔をしていた。そうだよね、律くんは何も知らなかったんだもん。
「天音、おめでとう。」
律くんの言葉はどこか他のことを考えながら発された上擦った声だった。
「いこい、大丈夫か?」
学校へ行く途中の道、そう声をかけてきた律くん。
それも天音に聞こえないようにこっそりと。
「…ん?どういうこと?」
「…いや、何もない。」
どうして私のこと心配するんだろう。
天音が咲夜くんばっかりになって、私が相手してもらえなくなることを心配してるとか?
そんなことより、
「律くんこそ…大丈夫?」
「は?何が?」
本当にわかってない表情。
好きな人が他の人と付き合っちゃったのに、すごく冷静なんだね。
私だったらきっと耐えられないかな。