君の矢印【完】


「き、聞き間違えじゃない?」



「んなわけねぇだろ。」



氷点下並みに冷たい目。



ああ、もう。



私のことなんて心配してどうするの?



忘れたいんだよ、律くんを。


別の人を好きになりたい。苦しいから。



「私、用事あるから」



咄嗟に荷物を抱えて、教室を出ようとするけど、私の腕を強引につかみ行手を阻まれる。



ふわっと風に運ばれてくるのは、大好きな律くんの香り。



そんな時でも胸が狭くなるのは、大好きな証拠。



「行くな。」




いつになく真剣な表情に、意味がわからなくなる。



込み上げる涙をなんとか堪える。



「…嫌だ。」




「いこい、怒るぞ。」




腕を握る力が強くなる。



…ちょっと痛い。




「もう怒ってるじゃん。」




「いいから、行くな。」



そんな真剣な顔をしてくれるのはどうして?



もう心がぐちゃぐちゃでわけが分からないよ…

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