君の矢印【完】


「行くもん。」



「いこい、いい加減にしろ。」




何それ。


私がこの前の合コン止めたから?


自分は行けなかったのに、私が行こうとしてるから怒ってるの?



それとも、誕生日が早いからってお兄ちゃん気分?



「うるさいな…」




「は?」




「うるさいって言ってるのっ。」




今まで喧嘩なんてしたことなかった。



律くんと意見が合わないことなんて、なかったもん。



でも今回だけは、言うこと聞いてあげられない。




好きすぎて辛いって気持ち、律くんは分からないの?



分かるでしょ。天音が好きなんだから。



「律くんには関係ないでしょっ!」



律くんの目が酷く動揺して切なく揺れる。



口走った酷い言葉に自分でもびっくりする。




「そんなわけないだろ。」



どうしてそんなに悲しそうな顔するの。



「もう…放っておいてよ!」



教室で思いっきり叫んで、騒がしかった教室が一気に静まりかえる。



私の言葉に、腕を握る力が一瞬緩んだ隙を見て、律くんから逃げる。




ダッシュで教室を出て、ロッカーまで走る。



…よかった、追って来なかった。


< 58 / 70 >

この作品をシェア

pagetop