オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
資機材の点検を終え、午前中いっぱい署内での訓練を終えて昼休憩の時間。


「今のところ平和ですね」

「そうだな、今のところな。
こういう日はあとからドッと来るんだよ」


ふうっと大きくため息を吐く山本さんは、同じ班の小隊長だ。

ふたりで休憩室へ向かい、隣の席に座った山本さんが巾着袋の中からランチボックスを取り出す。

山本さんはいつも愛妻弁当を持ってきている。

普段の俺はコンビニの弁当やカップ麺だけど、今日は…

小さなバッグの中から、パステルブルーのランチボックスを取り出す。

もしかしたら、このランチボックスはわざわざ俺のために買ってくれたんだろうか。

宝箱でも開けるような気持ちで、ドキドキしながら蓋を取る。

鶏の照り焼き、厚焼き玉子、ほうれん草とハムの炒め物にミニトマト。

たこの形のウインナーも入っている。

思わず笑みが零れた。

笑みというか、ただニヤけているだけかもしれない。

『あんまり上手じゃないんだけど』と彼女は謙遜していたけど、感動するくらいおいしそうだ。


「お、今日は手作り弁当?彼女できたの?」


隣から山本さんが覗き込み、にやりと笑って腰を突っつく。


「彼女じゃないですよ。
好きな子なんですけど」

「弁当作ってくれるなんてもう彼女みたいなもんだろ」

「いや、やさしい子なので、単純に俺の食事が偏るのを心配してくれてるだけだと思います」

「ふーん。こくはくしはいほ?」


ご飯を頬張りながらのくぐもった声は、うまくしゃべれていない。


「もうちょっと仲良くなってからかなって…
俺はずっとその子のこと気になってたけど、彼女にしてみればまだそういう対象じゃないと思うので」

「なんかいいな、そういうの。
若かりし頃を思い出すよ」


山本さんが小さく肩を揺らして楽し気に笑った。

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