オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
エステ機器の手入れをしながら、ふと焦げ臭い匂いが鼻をついた。

今、この店のエステ関連の機器は全部止まっている。

稼働しているのはアロマディフューザーくらいだけど、そこから匂いがしているわけではなさそうだ。

1階の喫茶店で何か料理に失敗したんだろうか。

こんなところまで匂いがのぼってきたことは今までないのに。

なにげなくサロンの重いガラスドアを開けて、頭が真っ白になった。

グレーの靄がかかっていて、廊下の先が見えない。

それと同時にけたたましい音が上から鳴り響いて、天井を見上げた。

火災報知器の音だ。

火事?嘘でしょ?

もう一度廊下の先に目をやり、かろうじて見える階段の下のほうからは黒い煙がもくもくと膨らんでいる。

どうしよう。これじゃ降りられない。

消火器も階段のすぐ脇にあり、あそこまで行くのは危ない気がする。

漂ってきた煙でむせこみ、煙が入ってこないようにいったんドアを閉めた。



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