オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
そう。昨日助けてくれたのは私のマンションの隣人、向坂(さきさか)さん。

エステティシャンをしている私は10時から出勤のため、大体9時過ぎに部屋を出る。

すると、ちょうど帰ってくる彼と出くわすことが多いから、挨拶程度ではあるけど一応顔見知りだったのだ。

だから昨日は驚いてしまった。

彼が何の仕事をしているのかなんて、全く知らなかったから。

どこへ行くのかはわからないけど、とりあえずお礼はお礼だ。

昨日の件で身元ははっきりしているし、変なところへ連れていかれることはないだろう。

私も部屋へ戻り、着替えをして簡単にメイクを済ませた。

部屋を出ると、すでに彼は外で壁によりかかってスマホをいじりながら待っていた。


「ごめんなさい、遅くなって」

「いや、大丈夫。行きましょう」


スマホをパンツの後ろポケットに入れた彼は微笑んで歩き出す。

駐車場に停めてある白いセダンに乗り込むと、エアコンを最大にしてギアを入れ、車を走らせ始めた。


「…とりあえず、もう勤務時間外だから言わせてもらうけど」


ハンドルを握りながら、なぜかさっきまでよりもずいぶん低いトーンで前置きする。


「この季節に空調が切れてるとこに2時間?
エレベーター狭いから熱がこもってすごい温度になってたんだよ。
なんでもっと早く助けを求めないの」

「えっ…あ、ごめんなさい。
でも、命に関わる人のための119番なのに、通報するのも悪くて…」

「自分だってじゅうぶん命に関わってたでしょ。
意識があるうちに連絡がきたからまだよかったけど、もっと危機感持たないとだめだよ」

「ごめんなさい…」


しゅんとする私に、彼は運転しながらたしなめる顔を数瞬向けて、ふうっと息を吐く。


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