オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
「翔太くんは消防署に勤めてるんだね」

「ああ、いつも変な時間に帰ってくるし、部屋にいる日もけっこうあるから不審だったでしょ」

「正直、何の仕事をしてるんだろうって思ってた…」


だろうな、と彼の横顔が笑った。


「俺は消防署の特別救助隊…レスキュー隊って言ったほうが親しみがあるかな。
消防と救急のほかに、人命救助を主要任務にする救助隊っていうのがあって、そこの隊員」

「人命救助…危険な仕事なんだね」

「うん、だから出動がない時はいつも訓練して身体を鍛えてるよ。
当番日は24時間勤務で、朝8時半から次の日の8時半まで。
そのあとは非番と週休」

「24時間って…もしかして昨日から寝てないってこと?
休まなくて大丈夫なの?」

「ちゃんと仮眠をとる時間はあるから大丈夫。
仮眠中でも出動指令が入ればすぐ行かなきゃいけないけど、昨夜はまとまって休めたから」

「大変…ゆっくり熟睡できないんだね」

「もう慣れちゃったけどね。
あおいちゃんは平日休み?」

「日、月で2連休なの。
エステティシャンをしてて」

「そっか。同じマンションに住んでても、こういうのってわからないもんだよな」


そもそも翔太くんは偶然時間帯が合って挨拶をするだけで、マンションのほかの住人なんてさっぱり交流もない。


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