ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
櫂人さんに別れを告げた後、私は携帯電話を解約し、語学教室の仕事をやめておかもとを手伝うことにした。
彼への未練を断ち切るため、ということもあったけれど、それ以上に祖父を助けたかったからだ。
私にとって祖父は親同然で、お店も含めて〝我が家〟だ。おかもとが潰れてしまうのを指をくわえて見ているだけなんてできるはずがない。
しばらくすると、ひとり奮闘する私を見て祖父も気力を取り戻してくれたのか、なんとかまともな営業をすることができるようになってきた。
その矢先、今度は私が開店準備中に倒れてしまった。
貧血気味なのは忙しくて寝不足のせい。食欲がないのは櫂人さんとの別れを引きずっているからだ。そう考えていたけれど、祖父が心配するので念のため内科を受診した。
結果は妊娠三か月。
呆然とした。
その日その日をやり過ごすことに必死すぎて、月経が遅れていることにすら気づいていなかったのだ。
どうして? なぜ?
あの夜、彼はきちんと〝責任ある〟行為をしてくれていたはずなのに。
改めて受診した産婦人科医にその疑問を尋ねたら、男性用避妊具での避妊は百パーセントではなく、まれにそういうこともあると説明を受けた。
戸惑いや不安はあったけれど、すぐに心は決まった。
ひとりでもこの子を産み育てよう。
たとえ祖父に反対されたとしても、愛する人の子どもを産まないなんて考えられなかった。