ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
「やっぱり子どもがいたんだな」

 今日は土曜日。おかもとの営業は午後二時までといつもより短い。けれどその分忙しさは凝縮されている気がする。いつもより早い時間から総菜の値引きをするため、ランチタイムを過ぎてもひっきりなしにお客がやってくるのだ。

「ありがとうございました」

 お弁当の入った袋を手渡し、笑顔でお客を見送る。少し前まで途切れることのなかった客足は閉店十分前で、なんとか一段落した。
 今日を乗り越えれば明日は定休日。行楽弁当の注文は入っているけれど、幸いすべて朝のうちに終わる。

 そうだ。明日は保育園もお休みだし、少し足を延ばして大きな公園に行こう。気候もいいし、お弁当を持って行けばのんびりできる。

 前に行ったとき、拓翔は長いローラーすべり台がかなり気に入ったようで、何度もくり返しすべっていた。
 楽しそうな拓翔の様子を思い出し、自然と顔がほころんだとき。

「こんにちは」
「いらっしゃいま――」

 顔を上げた瞬間固まった。

「どうしてここに……」
「二度目だな、その質問。弁当屋に弁当を買いにくるのに、おかしいことなんてないだろう?」

 確かにそうかもしれないけれど、ばったり再会して三日しかたっていないのだ。偶然なんて思えない。それがうっかり顔に出ていたみたい。私がより先に彼が口を開いた。

「この前配達してもらった同僚に教えてもらったんだ。とてもおいしかったと言っていたから、俺も食べてみたくなってね」

 微笑みながらそう言った彼はスーツにネクタイ姿。もしかしたら土曜日だけど職場に出ていたのかもしれない。
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