ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
***

 朝、目が覚めたらベッドの上だった。

 いつの間に運ばれたのだろう。甘く激しく責め立てられ、窓の向こうのきらめく夜景を楽しむ余裕など一切与えてもらえなかった。最後は半分意識を飛ばすようにして眠りに落ちた気がする。

 隣で拓翔と櫂人さんがぐっすり眠っている。ふたりの寝顔がそっくりで、思わず顔がほころんだ。ふふっと笑ったら彼のまつ毛がぴくりと揺れる。起こしてしまわないよう気をつけて、そっとベッドから抜け出した。

 顔を洗って軽く身なりを整えてからキッチンへ行くと、食器がきれいに片づけられている。私が眠っている間に食べてくれたのだ。

 ほっとしてすぐ、悔しい気持ちがむくむくと湧き上がった。食事は私が彼のためにできる数少ないことなのだ。今日こそはきちんとやり通そうと意気込んだ。

 朝食ができ上がる頃、櫂人さんと拓翔が一緒に起きて来た。三人で朝食を食べたあと、櫂人さんはいつもと同じ時間に出かける。今日は土曜日だけど、仕事があるようだ。

 昔から仕事で忙しい人ではあったが、今も変わっていないのだろう。
 それでも今日は用が済み次第帰ってくると言っていたから、夕飯はなにか栄養満点で彼が喜んでくれるようなメニューにしようと気合が入った。

 祖父のところに顔を出した帰りに、スーパーに寄ってみよう。おかもとから持ってきた食材もそろそろ尽きる頃だ。
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