イケメンドクター今世も梅香の君にめぐりあいて再び愛す
 
 何も、素敵な漫画みたいなプロポーズが欲しいとかそういうことではない。
 元々、マッチングアプリをしていたくらいだ。光琉が結婚したいのは年齢を考えればおかしくない。
 
 しかも相手の自分は、彼にとっては形ばかりだが親戚。
 付き合って喧嘩したから、はいさようならというわけにはいかないことくらい、恋愛初心者の紫にも分かっていた。

 光琉のことは元々好きだ。
 付き合いだしてから、彼の自分へ向ける優しさや男らしいところを知るにつれてどんどん好きになっていった。
 そのうえ、男女交際をしたことのなかった紫が急に光琉と深い関係になってしまい、さらに縛られている。

 結婚したいという言葉を何度も言う彼に普通だったら喜んで頷くところかも知れない。
 元々付き合う前から同棲に近い生活だったし、確かめることなど何もない。
 じゃあ、何が紫を引き留めるのか。それは、結婚というものへの恐れからだ。

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