恋愛は苦手です。でも恋の神様やってます。
私には秘密がある。

「女には、秘密があるほうが魅力的なのよ♡」

などと言いながら、母は我が家の長女に代々続く箱を私に差し出した。
噂に聞いてた、箱。
16歳の誕生日に渡されるとゆー、伝説の箱。

「開けてみて?」

ニコニコしながらどーぞどーぞする母。
恐る恐る開けてみると……ハサミが入っていた。

「なにコレ?」

ハサミじゃん、紙でも切りなさいってこと?
ふっつーの何の変哲もないハサミ。強いて言えばレトロ?な形?

??????

こんなものを我が家は代々受け継いできたなんて、無駄なことしてきたもんだ。
朝倉の名前は私で終わりにしよう、うん。

そんな私の様子を見て母は言った。

「あんた、これただのハサミだと思ってんでしょ?」と。

(そりゃそー思うよ!ただのハサミだもん!)
とは言えず、まあ……と誤魔化した。

「ほら、ちゃんと持ってみなさい!なにか見えない?」

何か?何が見えるのこのハサミ?
とりあえず持ってみることにした。すると……左手の小指から赤い糸が!!!!!
母にも赤い糸がついてる!!?

「なにコレきもっ!?」
「こら!きもいとか言わないの!これはね、我が家に代々伝わる鋏なの。赤い糸の伝説知ってる?小指と小指に糸が繋がってて、いつかその相手と結ばれるっていう♡」
「……まあ、知ってますけど。」
「その鋏はね、赤い糸のみを切れるの。縁切り鋏って言われているわ。」

(縁切り鋏……!でもそれ切ったら運命の相手はいなくなるからその先どーなんのよ!?)
真っ青な顔になった私を見た母は付け足した。

「大丈夫よ、切ってもその次の人とまたそのうち赤い糸が出てくるの!偶に同じ人とまた糸が出る人もいるわ。」

へ、へぇ……便利だね。
それにしてもなぜ私にこれを渡してきたんだ?
不思議に思い、顔をあげると母がまたニコニコしながら言った。

「ねぇ唯ちゃん、お母さんやおばあちゃんの職業知ってるよね?」
「うん…怪しい占い師。」
「怪し……っ!失礼ね、恋愛専門の占い師一族なのよ!百発百中なんだから!」
ぷんすこしながら母が言った。
「あなた、明日から継ぎなさい。」




……真っ白になった、目の前が。



その後は憶えていない。
あまりにもびっくりしすぎて倒れたらしい。
そして翌日目が覚めたら、「朝倉家当主 唯様」となっていた。

< 1 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop