恋愛は苦手です。でも恋の神様やってます。
夜9時。
遂にこのときがやってきた。
コトさんが食事の後、部屋にやってきてわざわざ着物を着付けしてくれた。
このお仕事は和服でやると。
それならそう言っておいてくれれば、祝い膳も少なめに頂いたのに……たくさん食べちゃったから苦しいよ!

客間に私と母が並んで座っている。
これから来るお客様……某財閥の御曹司らしいんだが、緊張して名前すら覚えられない。
だいじょぶかなー、私。

「失礼致します、お客様がお見えになりました。」
障子の向こうから人の影が。
緊張MAX!!!

「どうぞ。」

母が慣れた口調で言った。
障子が開き、20代後半……だろうか?男性がひとり、その母親らしき50代くらいの女性がひとり。

「貴重なお時間を取っていただき誠にありがとうございます。早速ですがみやび様……。」
「あぁ、まだお話をしていなかったわね。私引退致しまして、この度娘の唯が継ぎましたの。伊集院様の未来は娘が視ます。」
母は淡々と話した。が、大丈夫なのか……?という目で私を見ている。

いや、私もそう思っているよ伊集院様。

ってゆーか、お客様なのに母は随分上から話すんだな。占い師ってこーゆー感じなのかな?
そんなことを考えていたら母がじっと私を見つめていた。

「……??」
何?なんなの?
ってゆー目で母に訴えかけた。
「さぁ、早く箱を開けなさい。箱を開けたら鋏を両手で持ちなさい。」

あぁ、早速ですか……だいじょぶかなー。

緊張しながら箱を開け、そっと鋏を取り出した。すると部屋にいる全員の左手の小指から赤い糸が現れた。
外まで繋がっている。きっと運命の人のところまで繋がっているのであろう。って、これを追いかけるの!?

顔面蒼白になりながら母を見た。
母はニッコリしながら、言った。

「あなたが視るのは息子さんとこの方の運命よ……。」
母が一枚の写真を取り出した。綺麗な人、息子さんとやらと歳は近そう。
「写真……ですか?」
「そう、いまは全員の赤い糸が視えるでしょう??そうではなく、息子さんとこの写真をよく視て……。」

集中しろってことか。
目を瞑って、心を落ち着かせて……。
ゆっくりと目をひらく……。





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