変 態 ― metamorphose ―【完】
ちゃちな扇風機だけの密室。
唇を重ねるたびに真昼の重たい空気はさらに重たくなって、濃度を増す。
あたしはその圧に身を任せる。
エアコンの壊れた綴のアパートは、今日も蒸籠のごとく蒸し暑い。
だけど、綴となら蒸されてふやふやになって、べちゃべちゃになっても構わない。
むしろそうなれたらと思うけれど、残念ながら綴もあたしも人間だから、どんなにべちゃべちゃになってもひとつにはなれない。
だからせめてもと、今日もベッドでひとつになりたがる。
ひとつになるための擬似行為。
何世紀を越えようと、人間がやってることって基本は同じなんだな。
そう考えると、原始人にすらもちょっとした親近感を抱いてしまう。
「どうだった? あの人との二回目の食事は」
綴の吐き出した細い煙がキャミソールの肩紐に触れた。
し終わったばかりで、その話題はないんじゃない?
あたしは綴の白い腹に、ぎゅっと爪を立てた。
「ちょっ、だめろっ。煙草落とすだろっ」
「だめろ?」
「ダメとやめろが混ざった」
そっかそっか。
わかった顔をして、あたしはまた爪を立てた。
だめろってば、とうれしそうに身を捩る綴の腰は、とても不健康に影を帯びて、とてもあたし好みだ。
唇を重ねるたびに真昼の重たい空気はさらに重たくなって、濃度を増す。
あたしはその圧に身を任せる。
エアコンの壊れた綴のアパートは、今日も蒸籠のごとく蒸し暑い。
だけど、綴となら蒸されてふやふやになって、べちゃべちゃになっても構わない。
むしろそうなれたらと思うけれど、残念ながら綴もあたしも人間だから、どんなにべちゃべちゃになってもひとつにはなれない。
だからせめてもと、今日もベッドでひとつになりたがる。
ひとつになるための擬似行為。
何世紀を越えようと、人間がやってることって基本は同じなんだな。
そう考えると、原始人にすらもちょっとした親近感を抱いてしまう。
「どうだった? あの人との二回目の食事は」
綴の吐き出した細い煙がキャミソールの肩紐に触れた。
し終わったばかりで、その話題はないんじゃない?
あたしは綴の白い腹に、ぎゅっと爪を立てた。
「ちょっ、だめろっ。煙草落とすだろっ」
「だめろ?」
「ダメとやめろが混ざった」
そっかそっか。
わかった顔をして、あたしはまた爪を立てた。
だめろってば、とうれしそうに身を捩る綴の腰は、とても不健康に影を帯びて、とてもあたし好みだ。