変 態 ― metamorphose ―【完】
突き刺さるような強い眼差し。
あたしの身体を咄嗟に庇ってくれたチカくんの左腕が、やけに熱く感じる。
「ごめん。やっぱり助手席に乗せるべきじゃなかった」
「いや、いまのは……」
早く。早く、腕をどけて。
そうしないと、この鼓動が伝わってしまう。
「いまのは向こうが完全に悪いよ。チカくんが謝ることじゃないよ」
「いや、それでも……」
自分を責めるように眉を下げたチカくんからわずかにミントが香り、あたしの嗅覚も聴覚も視覚も触覚も、すべてチカくんで占められた。
残された味覚は、どうなってしまうだろう。
心臓はさらに弾みをつけて激しく暴れだす。
「そこのコンビニでいったん停まるから、後ろに移って」
チカくんはやっと腕を引いて、ハンドルを握った。
車がコンビニの駐車場に停まって助手席から降りると、夜気を含んだ風がすうっと全身を撫でた。
それでもまだ、あたしの身体はうんと熱を帯びていた。
赤ちゃんだった。
チカくんなんて、赤ちゃんのはずだった。
どうしよう。
チカくんが、男の人になってしまった。
あたしの身体を咄嗟に庇ってくれたチカくんの左腕が、やけに熱く感じる。
「ごめん。やっぱり助手席に乗せるべきじゃなかった」
「いや、いまのは……」
早く。早く、腕をどけて。
そうしないと、この鼓動が伝わってしまう。
「いまのは向こうが完全に悪いよ。チカくんが謝ることじゃないよ」
「いや、それでも……」
自分を責めるように眉を下げたチカくんからわずかにミントが香り、あたしの嗅覚も聴覚も視覚も触覚も、すべてチカくんで占められた。
残された味覚は、どうなってしまうだろう。
心臓はさらに弾みをつけて激しく暴れだす。
「そこのコンビニでいったん停まるから、後ろに移って」
チカくんはやっと腕を引いて、ハンドルを握った。
車がコンビニの駐車場に停まって助手席から降りると、夜気を含んだ風がすうっと全身を撫でた。
それでもまだ、あたしの身体はうんと熱を帯びていた。
赤ちゃんだった。
チカくんなんて、赤ちゃんのはずだった。
どうしよう。
チカくんが、男の人になってしまった。