変 態 ― metamorphose ―【完】
いままでだったら嫉妬みたいなことを言われたって、笑い飛ばせた。

だって、チカくんは赤ちゃんだから。
赤ちゃんだと思ってたから。

だけど、いまは違う。

たった一度。急ブレーキをかけたときのあの腕。あの眼差し。
ふとしたときに思い出しては、胸がぎゅっと苦しくなってしまう。

「お土産、なに買ってくれたの」

「ういろう」

「ういろう……。海とぜんぜん関係ないじゃん。しかも、なんでそんな渋いチョイス」

「だからだよ。そう言うと思ったから、ういろうにしたの。選んだのはあたしだけど買ったのチカくんだから、チカくんにお礼言ってね」

「わかった」

「大丈夫だと思うけど、溶けてたりしたら……」

あたしが言い終わるのを待たず、綴はとつぜんソファーにあたしの身体を倒した。
ビニールのようなピンクの合皮のシートに、ふたりぶんの体重がたちまち沈む。
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