変 態 ― metamorphose ―【完】
「八重子さんは昔からああいう(ひと)だから。来ただけでもすごいことよ」

あっちゃんが苦笑しながら言った。

「それは、チカくんが……」

八重子さんを招かないか、と言い出したのはチカくんだった。

チカくんづてでいいから銀行口座を教えるように、と言った八重子さん。
あたしはその話をチカくんには一切しなかった。

いつまで経っても連絡がこないことに痺れを切らしたのか、八重子さんはあたしではなくチカくんに連絡した。


――八重子さんなりの罪滅ぼしなんだよ。


八重子さんの前では啖呵を切ったチカくんだけど、このことに関しては八重子さんに同意した。
やり取りは自分がするから、とまで言って。

あっちゃんにその話をすると、あっちゃんもそれに同意した。
ちゃんと現実を見るべきよ、と言ったあっちゃんの顔は、いつもの友達のお姉さんのような顔ではなく、あたしと同世代の息子を持つ、大人の女の人の顔だった。

どうしたらいいんだろう。
ママだったら、なんて言うだろう。

受け取れるものは受け取りなさいよ、と邪気なく笑ってあたしの背中を叩く気はするけれど。
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