変 態 ― metamorphose ―【完】
「そういえば、輝子も茶碗蒸し好きだったわよね。あと、プリン。卵を使ってるものはなんでもおいしいって」
「業者からとんでもない量の卵を買って、困ったこともあったよ。ふたり暮らしなのに、ママってそういうこと考えないところあるから」
「ああ、あるある。そういうところある。輝子って見た目は八重子さんに似たけど、中身は父親に似たのかしらね」
ママの父親。つまりのあたしの祖父は、いまは老人ホームに入っているらしい。
数年前に派手に転倒して、もともと弱かった足腰に限界がきてしまった、とチカくんが教えてくれた。
てっきり、ふたりで暮らしていると思っていた。
八重子さんがなにも言わないのは、同情するような目を向けられたくないからだろう。
八重子さんとあたし。
ちっとも接点のなかった祖母と孫。
そんなふたりが、いまはどちらもひとりで暮らしていると思うと、妙な繋がりを感じてしまう。
ママの思い出話に花を咲かせながら、これはもうすべて過去なんだ、と悟った。
今日からは家に帰れば、本当にひとり。
やっと見慣れてきた骨壺は、もうそこにない。
ママとお父さんは同じ場所にいて、あたしは、ひとり。
「業者からとんでもない量の卵を買って、困ったこともあったよ。ふたり暮らしなのに、ママってそういうこと考えないところあるから」
「ああ、あるある。そういうところある。輝子って見た目は八重子さんに似たけど、中身は父親に似たのかしらね」
ママの父親。つまりのあたしの祖父は、いまは老人ホームに入っているらしい。
数年前に派手に転倒して、もともと弱かった足腰に限界がきてしまった、とチカくんが教えてくれた。
てっきり、ふたりで暮らしていると思っていた。
八重子さんがなにも言わないのは、同情するような目を向けられたくないからだろう。
八重子さんとあたし。
ちっとも接点のなかった祖母と孫。
そんなふたりが、いまはどちらもひとりで暮らしていると思うと、妙な繋がりを感じてしまう。
ママの思い出話に花を咲かせながら、これはもうすべて過去なんだ、と悟った。
今日からは家に帰れば、本当にひとり。
やっと見慣れてきた骨壺は、もうそこにない。
ママとお父さんは同じ場所にいて、あたしは、ひとり。