変 態 ― metamorphose ―【完】
「なんでママ、あの人とつき合ってたんだろう」

悪い人じゃない、と思う。

だけど、いまいちチカくんのよさがわからない。
泣いている姿のインパクトが強すぎたせいか、どうしても弱々しく頼りなく見えてしまう。

「つき合ってないって言われたんじゃなかった?」

「そうだけど」

それが腑に落ちない。

別に隠さなくていいのに。
そんなことで責めたり、拗ねたりなんてしない。そこまであたしは幼くない。

ママの出かける回数が増えたのは、なんとなく気づいてはいた。
ママから言い出すまでは待っているつもりだった。

まさか、相手がああいう人だとは。

「毎週会ってるような男女の間に、なにもないなんてあり得るかな。それにママ、あたしにいつか会わせるかもしれない人がいる、って言ってたし」

「それは意味深」

「でしょ? でも、なんであの人なんだろう。ママ、ああいう感じが好みだったのかな」

「あっちがうまいのかもしれない」

「ちょっと、やめてよ!」

オエエとえずいてみせると、綴の右手は灰皿で煙草を押し消して、あたしを構いはじめた。
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