変 態 ― metamorphose ―【完】
「どうだった、かな……」
照れくささと緊張を孕んだ、ちいさな声。
あたしみたいな素人相手に、どうして緊張するんだろう。
でも、チカくんらしい。
「うまく説明できないけど……」
そう言って顔を上げると、チカくんはわずかに顔を強ばらせていた。
ほんのりと赤い頬。
机に置かれた両手は、固く握られている。
「すごいね。あたし、泣いちゃった。分厚いから読み終わるかなって思ったんだけど、続きが気になってあっという間だった。読み終えたあとも、意識がずっと本の世界にあるみたいで、ぼうっとしちゃったよ。どうやったら、ああいう話が思いつくの? 今度サインしてよ。でも、いち花へ、とか書かないでね。そういうの入ってると、売るときに価値が下がっちゃうんだって」
ふざけて言ったつもりだった。
売らないでとか、ひどいなとか、ツッコミを入れてくれると思ったから。
それなのに、チカくんはなにも言わずにやわらかな眼差しであたしを包む。
それは、くすぐったいほどのやわらかさ。
照れくささと緊張を孕んだ、ちいさな声。
あたしみたいな素人相手に、どうして緊張するんだろう。
でも、チカくんらしい。
「うまく説明できないけど……」
そう言って顔を上げると、チカくんはわずかに顔を強ばらせていた。
ほんのりと赤い頬。
机に置かれた両手は、固く握られている。
「すごいね。あたし、泣いちゃった。分厚いから読み終わるかなって思ったんだけど、続きが気になってあっという間だった。読み終えたあとも、意識がずっと本の世界にあるみたいで、ぼうっとしちゃったよ。どうやったら、ああいう話が思いつくの? 今度サインしてよ。でも、いち花へ、とか書かないでね。そういうの入ってると、売るときに価値が下がっちゃうんだって」
ふざけて言ったつもりだった。
売らないでとか、ひどいなとか、ツッコミを入れてくれると思ったから。
それなのに、チカくんはなにも言わずにやわらかな眼差しであたしを包む。
それは、くすぐったいほどのやわらかさ。