変 態 ― metamorphose ―【完】
プレゼントのリボンを()くように肩の輪郭をなぞっていく右手。
左手の指の腹で腿の産毛を撫で上げられれば、身体はふるふる震えた。
得意気な瞳があたしを煽り、体温が急上昇する。

楽器を弾く人は、みんな綴みたいに手先が器用なのかな。

だとしたら、あたしが男なら、バンドマンとつき合った経験のある女の子とはつき合いたくない。
こんなに絶妙な匙加減で悦びを与えてきた男に、勝てる気なんてしない。


あたしのはじめては、綴の前につき合っていた彼氏だった。
痛いしグロいし、全体的になにがいいのかわからずに終わった。


なんだ、こんなものなんだ。

少女漫画も小説もドラマも、みんな嘘ばっかり。
まさか少子化対策のつもり?


あたしはそうやって世界中のありとあらゆる創作物に毒づいた。
だけど綴と肌を重ねて、その毒は払拭された。

綴の腕のなかは安全で平和で清らかで淫らで、もしも宇宙人が地球を侵略しに来る、と警報が鳴ったって、あたしたちはきっとそれを止めない。
なんなら宇宙人に見せつけたっていい。
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