変 態 ― metamorphose ―【完】
「はい、三分たった。ほら、どいて」

声をかけても綴はくぐもった声で「あー」とか「うー」とか言うだけで、どいてくれない。
モモンガのようにびたりとくっつく。
仕方がないので無理やりひっぺがした。

「三分でいいって言ったでしょ」

拗ねているのか眠いのか、綴はあたしにさっと背中を向けて身体を丸めた。
モモンガの次はダンゴムシか。

「ねえ、Tシャツ、一枚借りてもいい? ここに来るまでにけっこう汗かいちゃって、もう一回着るのもなんだか気持ち悪くて」

「やだ。でも、いいよ」

「ありがとう」

よしよしと頭を撫でると、綴は丸めていた背中をほどいて、はにかんだ顔をあたしに向けた。

反抗的にやだと言ってもすぐにそれを取り消して、撫でればかわいい顔を見せる。
こんなふうに綴が無意識にやっていることに、あたしがどれだけ胸をきゅうきゅう鳴らしているか、綴はきっと知らないだろう。

もっとかわいい顔が見たくて、もう一度頭を撫でようとしたけれど、離れがたくなりそうなのでやめた。
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