変 態 ― metamorphose ―【完】
「あのさ、綴」

服を着ながら、恐竜のように骨がぽこぽこ浮き出た背中に話しかけた。
綴は「ん」と「あ」が混ざったような、眠そうな相槌を返した。

「チカくんがね、今度チカくんの家に来ないかって言ってるんだけど、どうかな。綴、やっぱり忙しい? チカくんち、おいしいお肉とかいっぱいあるみたいで、ご馳走してくれるってさ」

チカくん、と口にするたび、仄暗い罪悪感のようなものが胸にまとわりつく。
声が上ずってしまった気がするのは、あたしが過敏なだけだろうか。

無反応な背中に、もう一度問いかける。

「どうかな?」

「いいんじゃない?」

思っていた反応と違う。
お肉につられて「やった。タダ肉!」とか言うと思ったのに、「いいんじゃない?」なんて、変な半疑問形で返された。

「別に、忙しいなら無理しないでいいよ」

「いや、行くよ」

「でも」

「行くよ」

綴はあたしに被せるように言った。

「わかった。あとで大丈夫そうな日、いくつか教えて」

「んー……」
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