変 態 ― metamorphose ―【完】
「かえちゃんは……。葛見さん以外の人を意識したことって、ある?」

言ってすぐに後悔した。

かえちゃんはストローを回す手を止めて、あたしの方にくるりと身体ごと向けた。
大きく見開かれたアーモンド目に捕まえられる。


「なんでなんで? 綴さん以外の人となにかあったの?」

「違うよ。あたしじゃなくて、バイト先の人がそういう話をしてて。かえちゃんはどうなんだろうなって思って」

「あ、なんだ。びっくりしたあ。変な想像しちゃったよ」

あたしと違って人を疑わないかえちゃんは、びっくりしちゃったよ、ともう一度言ってからようやくキャラメルフラッペに口をつけた。
液状化したフラッペは、チューブのような太いストローでぐんぐん吸い上げられていく。

かえちゃんは、ふう、と軽く息を吐いた。

「いち花だから言うけど、あるよ。圭くん以外の人に、どきっとしたこと。ぜったいに圭くんに言わないでね。綴さんにも」

あたしは無言で首をこくんと振った。内心ではひどく驚いていた。
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