変 態 ― metamorphose ―【完】
「俺とチカくん、どっちがうまいかな」

「ねえ、本当にそのネタやめて」

「やだ?」

「いいわけないでしょ」

ふっと笑みをこぼした唇があたしを(ついば)み、ベッドのパイプが軋んだ。

見えないところなら(あと)つけてもいい?
そう訊かれ、あたしは首を縦に振る。
綴は案外、子どもっぽいことをしたがる。

あたしの花を脇腹に宿した綴に、駄目なんて言えるわけがない。

身体に刻まれていく赤い印。
湿度たっぷりのシーツにさらに熱がこもって、濃くなっていく汗のにおいに胸を締めつけられる。

もっとちょうだい。
ねだる代わりに身を捩る。

「いち花」

ふいに呼ばれ、とろとろになった瞼を薄っすらひらいた。

「エアコン、つけたい?」

試すようにゆっくりと訊かれた。

「……ううん」

「いいの?」

「うん。いい、いらない」

汗のにおいに興奮するあたしも、綴と同じく変態だろう。
見つめ合った変態と変態の唇が、甘く重なり合う。

神様にいつオーダーメイドしたのかと思うくらい、唇も舌もぴったりと嵌まる。
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