変 態 ― metamorphose ―【完】
「でも、わからないよね。どういう関係なのか、なんて。綴さん、浮気するような人じゃないしさ」
「……その女の人と会ってたのって、いつのことかわかる?」
訊いてみるからちょっと待ってて、とかえちゃんはスマホをタップしはじめた。
高速で動くつるんとしたすみれ色の爪を眺めながら、想像してみる。
じつは、綴には妹かお姉さんがいて、その女に会っていただけ。
もしくは、その女は熱心なファンで、綴はつきまとわれていただけ。
それか、女の人に見えただけで、実際は髪の長い男の人と歩いていただけ。
それから、それから。
それから他に、どんな可能性があるだろう?
チカくんのように物語を創る力が欲しい。
いまだけでいいから。
少しだけでいいから。
クローゼットの白いTシャツが、脳裏に浮かぶ。
「いち花、いつだかわかったよ」
かえちゃんが教えてくれたその日付けは、ぐさりと胸に刻まれた。
それは綴がとつぜん海に行けないと言った、あの日だった。
「……その女の人と会ってたのって、いつのことかわかる?」
訊いてみるからちょっと待ってて、とかえちゃんはスマホをタップしはじめた。
高速で動くつるんとしたすみれ色の爪を眺めながら、想像してみる。
じつは、綴には妹かお姉さんがいて、その女に会っていただけ。
もしくは、その女は熱心なファンで、綴はつきまとわれていただけ。
それか、女の人に見えただけで、実際は髪の長い男の人と歩いていただけ。
それから、それから。
それから他に、どんな可能性があるだろう?
チカくんのように物語を創る力が欲しい。
いまだけでいいから。
少しだけでいいから。
クローゼットの白いTシャツが、脳裏に浮かぶ。
「いち花、いつだかわかったよ」
かえちゃんが教えてくれたその日付けは、ぐさりと胸に刻まれた。
それは綴がとつぜん海に行けないと言った、あの日だった。