変 態 ― metamorphose ―【完】
チカくんの家にはホットプレートがない。

あたしが家からホットプレートを持っていくと言うと、チカくんは車で家まで迎えに行くと言い出した。


――綴と待ち合わせていっしょにチカくんの家へ向かうから、ホットプレートは綴に持たせる。だから、平気。


そう言って断った。
そうなるはずだった。

それなのに、綴からはまったく連絡がない。

九月に入っても日差しはまだ容赦なくて、あたしはホットプレートを抱えて、ふらふらとチカくんの家へ向かった。

夢の印税ハウス、なんて綴がふざけたことを言うので、あたしも勝手にデザイナーズマンションのような、そういうドラマに出てくるようなところを想像していた。

教えてもらった住所を頼りに辿りついたのは、さっぱりとした平屋だった。
ちいさいわけじゃないけど、四枚の大きな白い壁と、それを覆う一枚の屋根、といった具合に。

シンプルで、チカくんらしい。
余計なものとか、ええかっこしいなところがない。
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