変 態 ― metamorphose ―【完】
「俺、いまのバンド辞めて、別のバンドに加入するんだ」
「……別の、バンド?」
「覚えてるかな。前に俺が憧れてるって言ったバンドなんだけど。ほら、あの……」
そのバンドの名前には聞き覚えがあった。
綴が活動しているシーンではとても有名なバンドで、人づてにメンバーに紹介してもらったときには緊張と興奮で手が震えてしまった、と綴はうれしそうに話していた。
「それって、すごいことだよね?」
バンドの実力や知名度の差なんかがわからないあたしには、どれくらいすごいことなのかわからない、というのが正直なところだった。
綴にとって、それが大きな決断ということはわかるけれど。
「うん。自分で言うけど、すごいよ。スポーツ少年団のちびっ子がメジャーリーグに誘われるくらいの奇跡だって思う」
「いまのバンドは……」
「メンバーにはもう話して、いま決まってるライブが終わったら脱退することになってる。前から感じてたんだ。いまのバンドじゃ上にはいけないなって。いまが限界で、これより上はないなって。本当はいち花にも早くこの話をしたかったんだけど、自分でも信じられなかったし、実力が伴ってないって自覚してるから言い出しづらくて……」
「……別の、バンド?」
「覚えてるかな。前に俺が憧れてるって言ったバンドなんだけど。ほら、あの……」
そのバンドの名前には聞き覚えがあった。
綴が活動しているシーンではとても有名なバンドで、人づてにメンバーに紹介してもらったときには緊張と興奮で手が震えてしまった、と綴はうれしそうに話していた。
「それって、すごいことだよね?」
バンドの実力や知名度の差なんかがわからないあたしには、どれくらいすごいことなのかわからない、というのが正直なところだった。
綴にとって、それが大きな決断ということはわかるけれど。
「うん。自分で言うけど、すごいよ。スポーツ少年団のちびっ子がメジャーリーグに誘われるくらいの奇跡だって思う」
「いまのバンドは……」
「メンバーにはもう話して、いま決まってるライブが終わったら脱退することになってる。前から感じてたんだ。いまのバンドじゃ上にはいけないなって。いまが限界で、これより上はないなって。本当はいち花にも早くこの話をしたかったんだけど、自分でも信じられなかったし、実力が伴ってないって自覚してるから言い出しづらくて……」