変 態 ― metamorphose ―【完】
「いつ誘われたの?」
「俺が海に行くのドタキャンしたときあっただろ? あのとき。うちのバンドに入らないかって言われて、まずは会って話すことになって。あのときは本当にごめん。すぐに会って話さないと加入の話がなくなるんじゃないかって、怖かった。うれしくて舞い上がってたし、信じられなかったし、おかしくなってた」
そういうことだったのか。
どこか様子がおかしいな、と思ったのはそういうことか。
「あの日、すごい緊張しちゃってさ。道に迷って事務所の人に迎えに来てもらったりして、めちゃくちゃ恥ずかしかった」
「事務所の人って……女の人?」
「そうだけど。なんで?」
「ううん。べつに」
拍子抜けしてしまった。
忍び寄っていた絶望が遠のいて、ぎゅうぎゅうだった頭のなかはガス抜きされたようにぷしゅーとへこんだ。
強風に吹かれたら、身体ごと飛ばされてしまいそう。
とたんに明るくなった視界がまぶしい。
「俺が海に行くのドタキャンしたときあっただろ? あのとき。うちのバンドに入らないかって言われて、まずは会って話すことになって。あのときは本当にごめん。すぐに会って話さないと加入の話がなくなるんじゃないかって、怖かった。うれしくて舞い上がってたし、信じられなかったし、おかしくなってた」
そういうことだったのか。
どこか様子がおかしいな、と思ったのはそういうことか。
「あの日、すごい緊張しちゃってさ。道に迷って事務所の人に迎えに来てもらったりして、めちゃくちゃ恥ずかしかった」
「事務所の人って……女の人?」
「そうだけど。なんで?」
「ううん。べつに」
拍子抜けしてしまった。
忍び寄っていた絶望が遠のいて、ぎゅうぎゅうだった頭のなかはガス抜きされたようにぷしゅーとへこんだ。
強風に吹かれたら、身体ごと飛ばされてしまいそう。
とたんに明るくなった視界がまぶしい。