変 態 ― metamorphose ―【完】
いっそ誘った方が気分転換になってよかったのかもしれない。
だけど、あっちゃんに綴を紹介するのはやっぱり恥ずかしい。

「ちょっと買い物に行ってくるから、ふたりで待ってて」

冷蔵庫を覗いたチカくんが言った。

「もしかしてヨーグルト買いに行くの?」

「うん。いち花はなにか欲しいものはある?」

あたしが首を横に振ると、チカくんはお財布を持って家を出た。
自分の家の庭で採れたラズベリーを持ってきたあっちゃんが、やっぱりラズベリーにはヨーグルトよね、と言ったからだ。

「チカって、やっぱりチカよね」

「なにそれ?」

あっちゃんはティーカップをテーブルに置くと、呆れたようにため息をついた。

「だって、そういうこと言うならヨーグルトも持って来いよ、とは言わずに、それじゃあ買いに行きますね、なんて言うんだもの。変わらないなあ、と思って。でも、言うときはちゃんと言うみたいね。ちょっと安心した」

「言うときは言うって、なにかあったの?」
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