変 態 ― metamorphose ―【完】
「夏に、チカが八重子さんにガツンと言ったんでしょ? 素直になれって」

「素直に……」

少し違うけど、合ってるといえば合ってるような気もする。
だけど、どうしてあっちゃんが知ってるんだろう。

「喫茶店のマスターから聞いたのよ」

「なんで?」

「じつは親戚で」

田舎の情報伝達力って怖いな、と少し怖くなる。
なにか秘密があっても、隠し通すのは難しそう。

「あのチカが八重子さんにキレるって、天変地異もいいところよ。びっくりした。私も見たかったな」

そう言われて、ふと思い出した。
あっちゃんなら知ってるかもしれない。

「あのさ、八重子さんからママが二十年くらい前に会いに来て、そのときの様子がおかしかったって聞いたんだけど、あっちゃんはなにか知ってる? なにか悩んでたんじゃないかって八重子さんは言うんだけど」

「二十年くらい前?」

「うん。まだあたしがお腹いない頃の話みたい」

「うーん……。その頃ってちょうど私が立て続けに息子を産んだ時期だから、そんなに輝子と連絡とってなかったのよね。でも、あの実家に帰るなんてそうとう悩んでたのかしら」

「そっか。あっちゃんもわからないか」
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